「あれから」 最後に逢ったのは何時だったか覚えていないけど、 貴女の怒った顔はまだ覚えています。 あの日、私の本音の裏返しと照れ隠しに包まれた一言に、 貴女は怒ってしまわれたんですね。 …でも、貴女も悪いのですよ。 貴女の本心が私に読みとれないように巧妙な言葉の罠を仕掛けたのですから。 私はその罠にあえて掛からなければならなかったのに、 経験不足から逃げてしまった。 その巧妙に隠された貴女の本心は、 その以前の貴女のそぶりから読まなければいけなかったのですね。 …あれから… 私も経験を積んだと思います。 今になって貴女の本心が読めたなんて… もう一度逢って、話をしたいな 今度は貴女の罠に旨く掛かってあげられます。 …お互い、まだ独り身なら… 藤次郎正秀